2021-07-20

大阪居留地跡を行く(クリスチャンの思い出と川口華商)

「クロスカルチャー」、「外国人居留地」と言われると、皆さんは何を思い浮かべるだろうか。
関西の人間のわたしは真っ先に「神戸」を思い浮かべてしまう。

もちろん、それは間違っていない。
しかしわたしは阿波座から川口を歩くまで知らなかったのだ。
大阪にも外国人居留地の歴史があったことを。

かつて昔のブログにおいて、わたしは神戸港について「幕末のドタバタで遅れたというよりは、都市の中心部近辺で開港をすると軍事機密などが漏れやすくなるからできるだけ遠ざけた場所を開くことにしたのではないか」と書いた。

「神の戸」に集まる世界の信仰と生活〜神戸ワールド巡礼&食材堪能ツアーその1〜

しかし、よくよく文献を読み返すと、開港地が「函館・新潟・神奈川・神戸・長崎」だっただけで、外国人居留地は 「東京(築地)・大阪(川口)」も含まれていたのだ。

全然意識してなかった!!
だって神戸と横浜以外はほとんど注目されないんだもの。。

それにしても、こんな心臓部に居留地を作っていいものなのか。住まわせるくらいなら大丈夫だと思ったのか、列強の指示にあらがえなかったのか。進んで日本政府が良い居留地を作ろうとしたとは到底思えないのだ。実際、大阪の居留地はあまり外国に人気がなく、遅れて開港した神戸港ができてからはみんなそちらに移動してしまった。

それに対して、東京(築地)はどうか。
諸条件において大阪とほぼ同じ条件下にあることを鑑みると、東京もほぼ同じ末路を辿ると考えてよさそうだ。都市部近郊であることは間違い無く、なんなら政府の心臓部である「東京」に一番近い分、普通に考えるとなおさら外国人を近づけたくないはずだ。大阪と東京の居留地の類似性と相違点については、面白すぎて長くなるので後にしたいと思う。(実際に地図や跡地を見てからの方がピンと来ると思うので)

というわけで、さっそく阿波座を歩いてみた。
最近、旅歩きの地図の練習をはじめてみたので、下手な絵地図も載せておく。

阿波座〜川口は木津川・堂島川・土佐堀川が入り組んでいて、橋も多く「水都・大阪」を実感をする。

大阪居留地ができたことで、阿波座周辺(江之子島)には大阪府庁や市庁舎のほかに、電力会社などのインフラ企業、病院、学校など、大都市の中心部としての顔を形成していった。

その後、条約改正で居留地が廃止されたり、大阪大空襲などの世界大戦の関係で、現在にも形として残っているものはほとんどない。神戸もそうであるが、当時はまだ耐火性の高い鉄筋コンクリートで建てられている建造物が少なかったのだ。(ちなみに日本の工務店によって見様見真似で1935年に建てられた日本最初のモスク「神戸モスク」は、防災に強い鉄筋構造であったため、三宮の焼け野原の中にただ一つ残ったそうだ。さすが竹中工務店!)しかし、そのかわりにところどころに石碑が建てられているので、当時に思いをはせることはできる。

そんなこんなで、阿波座駅についたので歩いてみる。
(「阿波座」の由来は徳島にあるのだが、これについては四ツ橋編で語るので今は省略する)

木津川に向かってテクテク歩いていく。阿波座から木津川手前のあたりは江之子島と呼ばれていて、かつては中之島のように砂州だった場所だ。

1874(明治7)年、初の本格的な大阪府庁舎がこの江之子島に建てられました。enocoのすぐ北側です。西洋の古典様式に倣った重厚な建築は、「江之子島政府」と呼ばれて名所となりました。大阪市庁舎も、最初は江之子島に設けられました。この地は、かつて大阪の行政の中心地だったのです。そして木津川の対岸には、外国人の暮らす川口居留地がありました。洋館が建ち並ぶモダンな街は、新しい文化の発信地となりました。

この辺の詳しいことについては、木津川の手前にある「江之子島文化芸術創造センター」にいってみるといい。この建築物自体が歴史を象徴している。

江之子島文化芸術創造センターと江之子島の歴史
enocoと江之子島の歴史

ちなみにちかくには日本一うまい焼きそばを出す(らしい)喫茶店がある。
気になる人は確かめに行ってみるといいだろう(他人任せ)。

さて、現存している木津川まで来た。ここにも、昔の大阪府庁舎、市庁舎のことが石碑に書かれている。

木津川を渡るともうそこは川口だ。

まずは、何を置いても「大阪居留地跡」の石碑を見にいかねばなるまい。本田小学校の片隅に建てられている。

はう、、、こんな石碑だけでも残ってくれているとフィールドワークしがいがあるというもの。

石碑に昔の地図が載っていた。

商業港として廃れてからは、代わりに外国人宣教師たちが入ってきて教育や医療に力を入れていたらしい。プール学院や大阪女学院といった今日有名な私立キリスト教系学校が元々はここから生まれたものだった。東京でも同じく、青山学院大学などの名だたるキリスト教系の有名私立学校は旧居留地の築地で生まれている。その後、内地雑居制度が取られてからは地理的条件の良い内陸部へ移動していったのだ。なるほど、これはとても感慨深い。

そして、当時の様子をのこす川口教会。安治川と木津川が出合う中州に位置する西区川口地区にある。正式名称は日本聖公会川口基督教会。ゴシック風でシンプルなデザインの建物は、煉瓦造、2階建塔屋付の教会堂で、礼拝堂は一室、奥に祭壇部が設けられている。レンガが美しい。

煉瓦造りの建物に教会のシンボルが輝く。十字架が独特だ。

川口が大阪の玄関口として開港されると、外国人居留地が設置され、イギリスの13社をはじめ、仏、独、米、オランダ、ベルギーの商社が事務所を持った。舗装道路には歩車道の区分もあり、ランプの街灯が灯り、ユーカリの並木がそよいでいたといい、ここ川口から洋食、パン、牛乳、クリーニング屋などが始まったと言われるほど、西洋文明が開化していた。しかし川底が浅く、大型船の運航ができなかったことなどから、一帯は次第に衰退していき、貿易の要は神戸港へと取って代わり、外国人も移住。いまはこの教会が唯一、大阪が開港した頃の面影を残す建物だ(登録有形文化財)。

大阪観光局公式サイトより

教会のレトロ美しさにひたっていると、その向かいにいかにも昔っぽい建物が。

わお、私好み!!

しかし、見たところ、何も書かれていない。今も普通に使われているようだが、やはり戦前の建築に見える。ホテルのようではないし、こちゃこちゃした小さな部屋がたくさんあるので、昔の商会がたくさん入っていた場所なのか?

しかし、GoogleMapを見ても何も書かれていない。建物の名前もわからない。

そしてふと思いついたのが「行桟(ハンサン)」だった。居留地として振るわなかった川口の場所に華橋商人が移り住み中華街ができるのだが、その行商が「川口華商」と呼ばれている。当時は、外商において客桟(カクサン)、行桟(ハンサン)という中国ならではのシステムがあり、旅行業と旅行貿易代理店(何でも屋)のような関係であった。その事務所が二階建てのアパートというものだったそうだから、もしかしたらこの建物だったのかもしれない。

川口華商について詳しいことを知りたい人は国立国会図書館デジタルアーカイブへ
事変下の川口華商 – 国立国会図書館デジタルコレクション

てくてく安治川手前まで来ると、また石碑が。

どうやら昔はモダンスタイルな橋があったようだ。

そうこうしているうちに、埠頭まできてしまった。向いはお金をかけすぎという噂のある大阪中央市場だ。

それにしても、通勤ルックでこんな場所を歩いて写真を撮っていると、周りから見ると不審者以外の何者でもない。コンクリづめにされて大阪湾に沈められないように気を付けなくては。

ドキドキ埠頭沿いをあるいていくと、フェンス越しに今日のお目当てのものをやっと見つける。
「大阪開港の地」の石碑。おおお、大阪運上所感あるう。他にも五代さんや寺島さんの文明開化のさきがけの匂いがする石碑がいくつか。
フェンスの間からがんばって写真を撮る私。

客観的に見て自分が鼻息荒く怪しい行動をとっていると分かっていても、もう止められない。フェンスがあってむしろよかった。

最後に、それらの石碑の南側にあって、かつての旧大阪税関富島出張所の近くにある「富島天主堂跡地」に立ち寄る。いまはキリスト教系幼稚園ができていた。やはりこれは流れをくんでのものなのだろうか。気になる。。

幼稚園の敷地の片隅に草にまみれた石碑が。

怪しいって言われたってもういいや。だってこんなところにあるんだもん。

そしてこのとき私は気づかなかったのだが、同じ幼稚園の敷地内に「外人雑居地の跡」という説明板があって、かつてのキリスト教建築について言及されていたそうだ。今度チェックせねば。

なお、居留地といえばセットで作られるのが花街。遊郭のことだ。大阪では「松島新地」である。新地に花街が作られるのは、すでに整っている正式な街中にはそういったものは作れない(道徳上?公共上?)からだ。だから大体「悪所」になることが多いし、病気も広まりやすい。

大阪には、江戸時代に創設された老舗の新町・堀江遊郭(これは「四ツ橋」のブログで書く予定)、曽根崎新地、南地五花街、明治初期に創設された今の松島遊郭、大正の飛田遊郭、大正後期の住吉同盟組合、南陽組合、昭和初期に創設された今里新地組合と、9箇所の遊郭が有名であったようだ。

明治初期ということは、やはりこの開港に伴って新たに作られたものと言えよう。今度は松島を歩いてみたいと思う。

続きをお楽しみに。

この記事が気に入ったら
いいね ! しよう

関連記事

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください

error: Content is protected !!